小林製薬の紅麹問題、「成分X」の正体 4/2日経ビジネス電子版記事 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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小林製薬の紅麹問題、絞り込まれてきた「成分X」の正体

4/2日経ビジネス電子版記事

 

感想
ようやく「未知の物質」の姿が見え始めたところ。
原因物質と目される「プべルル酸」はヒトに対する毒性も定かではない物質。その特性評価もこれから進むのだろう。
まさに「未知の物質」だったという事で、小林製薬も不運だったかも知れないが、この会社はキャッチーなネーミングでいささかアヤシげな製品を売っていた事も確か。
アセモア ガスピタン 漢方ズッキノン サカムケア サラサーティ ダスモック ナイシトールZ ハッキリエース ハレナース ラナケインS ワキガード・・・
それが悪いとは言わないが、製薬メーカとして今一度取り組み方を見直す時期かも知れない。
しかし気になるのは補償問題。腎機能は多くの場合、一旦機能を損なったら元に戻すのはまずムリ。

見舞金程度で「ハイそうですか」と言える人は少ないだろう。


記事本文(転載ご容赦) 筆者:Aya Kubota 2024.4.2
小林製薬が製造する独自の紅麹(こうじ)原料を含む機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人が健康被害を訴え、死亡例や入院例が出ている問題で、2024年3月29日、同社は記者会見を開催。紅麹原料の一部のロットで検出された不明の「成分X」について、分子量150~250の環状構造を有する化合物であり、これまでに、プべルル酸などいくつかの既知の化合物に絞り込んでいることを明らかにした。

小林製薬によれば、大阪工場(大阪市淀川区)では紅麹菌の菌株A、菌株Bを用いて紅麹原料を製造。最終製品の特性に応じて使い分けていた。いずれも、凍結保存しておいた紅麹菌株をいったん液体培地(生育環境)の中で増やして、それを冷蔵保存。必要時にそこから一部を取り出して、それを蒸したコメに混ぜて、40日以上発酵させる固体培養法で紅麹原料を製造していた。冷蔵保存した液体培地中の菌体は、複数のロットの製造に使われ、2週間程度で使い切っていたという。

23年、大阪工場では自社製品用と社外供給用として、菌株Aを用いて33ロットの紅麹原料(9.3トン)を製造。また、社外供給用として菌株Bを用いて54ロットの紅麹原料(9.2トン)を製造した。

画像説明

小林製薬は、2種類の菌株を用いて自社製造用と社外供給用の紅麹原料を製造していた。成分Xが検出されたのは、2023年4~10月に大阪工場で菌株Aを用いて製造された合計10ロット。自社製造用の紅麹原料は、機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」などの自社製品に、社外供給用の紅麹原料は、子会社の小林製薬バリューサポートを通じて、多数の食品企業や商社、代理店などに販売され、多くの製品に使われていた(作成:日経バイオテク編集部)

同社によれば、菌株Aを用いて製造された33ロットの紅麹原料のうち、自社製品用の4ロットと社外供給用の6ロット、合計10ロットから成分Xが検出された。一方で、菌株Bを用いて製造された54ロットからは、成分Xは検出されていない。

製造本部長を務める山下健司執行役員によれば「成分Xが検出された合計10ロットは、いずれも23年4~10月に大阪工場で製造したものだった」

小林製薬では、過去に製造した紅麹原料のすべてのロットについて、一部サンプルを保管している。
「2022年以前のロットについては、すべて解析を終了しているが、成分Xは検出されていない」(山下執行役員)

プべルル酸は抗菌活性やヒト細胞へ毒性を示す化合物
成分Xについて、小林製薬は外部の複数の大学・研究機関と共同で解析を進めていた。ヘルスケア事業部の梶田恵介食品カテゴリー長は、「3月22日から1週間で、分子量150~250の環状構造を有する化合物であることまで分かってきた」と説明。
これまでに、プべルル酸などいくつかの既知の化合物に絞り込んでいるものの、最終的な解明には至っていないという。

プべルル酸は、1932年、青カビがつくる化合物として、論文報告された。過去の論文報告によれば、プべルル酸がヒト細胞へ毒性を示すことなどが明らかになっている。

ただし、ヒト(個体)に対する毒性や腎機能障害を起こすメカニズムなどは分かっていない。

小林製薬は今後、厚生労働省や国立医薬品食品衛生研究所(国衛研)とともに、最終的な成分Xの解明に加えて、腎機能障害との関連などヒトへの毒性についても検証を進める。
成分Xが、紅麹中の何らかの成分と相互作用して腎機能障害を引き起こした可能性も現時点では否定できないため、そうした検討も進めるとみられる。

「製造工程に青カビが生えるところがないか総点検中」
もっとも、成分Xが紅麹原料に混入した経緯については全く分かっていない。記者会見で山下執行役員は「紅麹菌株が成分Xを産生した、あるいは、何らかの製造工程で外から成分Xが混入したという2つの可能性があるのではないかと考えている。原料の受け入れから製造工程における混入まで、現在はあらゆる可能性を検討している」と説明するにとどめた。

小林製薬は、16年2月、グンゼから紅麹に関する研究・販売事業を取得。「事業譲渡と同時にグンゼの技術者にも転籍してもらい、グンゼで確立されていた製造技術を、小林製薬が標準操作手順書(SOP)に落とし込んで引き継いだ。その上で、2016年から大阪工場の専用ラインで紅麹原料の製造を行っていた」(山下執行役員)

21年4月には、紅麹原料に含まれ、LDLコレステロールを下げる機能が報告されている米紅麹ポリケチドを機能性関与成分とした機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を発売(24年3月26日付けで機能性表示食品の届出を撤回)
22年には一定水準にある食品製造業者の施設を認証する、大阪府版食の安全安心認証制度に基づき、大阪工場が認証を取得していた。

ただしこれまでに、「紅麹原料の原材料の変更、培養工程の変更などはしていない」(山下執行役員)。成分Xが紅麹原料に混入した経緯を明らかにするため、現在同社は、第三者も含めて製造管理体制、製造工程に問題がなかったかどうかを調査中。

「仮に、成分Xがプベルル酸だった場合、弱いながらも青カビに産生能があると認識しているので、青カビが生えるようなところがないか、混入する可能性のあるところがないか、現在製造工程を総点検している」と山下執行役員は話していた。

3月31日時点で死亡例は5人、入院例は143人に
紅麹原料は、小林製薬の機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」など複数の製品に使われていたほか、子会社の小林製薬バリューサポートを通じて、多数の食品企業や商社、代理店などに販売されており、24年3月29日時点で、少なくとも173社に供給されていたことが明らかになっている。

「紅麹コレステヘルプ」などを摂取し、健康被害を訴えているのは24年3月月31日時点で、死亡者が5人、入院者数は143人。

死亡例は、70歳代~90歳代の男女。「腎疾患を伴っていた症例もあるが、それ以外の診断が付いていた症例もある」(信頼性保証本部長の渡邊淳執行役員)という。死亡例の中には「紅麹コレステヘルプ」を1年以上服用していた人もいた。

ただし、家族などが「摂取していたと思う」と申し出ている症例もあり、服用頻度は不明。入院例は、「40歳代~70歳代ぐらいが中心だが、個別の症例の重症度などは分かっていない」(渡邊執行役員)という。
さらに、24年3月亜29日時点で外来を受診していたり、今後受診を希望したりする人は約680人に上る。

これまでのところ、23年4~10月に大阪工場で製造された紅麹原料の一部ロットから検出された成分Xと健康被害との因果関係が疑われている。ただ、23年4月よりも前からの健康被害を訴えているケースもあるという。渡邊執行役員は「今回の意図しない成分(成分X)の混入によるものか、それ以外の理由なのかは正直分からない。ただ、現時点でそれらを区分できないので、すべてを健康被害に含めている」と説明した。

当初はポリケチドやシトリニンを疑ったものの可能性低く
3月29日の記者会見で「非常に多くの人にご心痛ご不安をおかけし、社会問題に発展して深くお詫び申し上げる」と陳謝した小林製薬の小林章浩代表取締役社長(写真:編集部撮影)
同社が紅麹原料を含む製品の自主回収や使用中止を公表するまでの経緯は、以下の通り。

1月15日に1例目、1月31日に2例目、2月1日に3例目の報告が寄せられ、いずれも安全管理の担当者が医師のヒアリングなどへ動いた。2月5日には、健康被害への対応について初めて会議を開催したという。

並行して同社は、健康被害の原因を究明するため「紅麹コレステヘルプ」の機能性関与成分である米紅麹ポリケチドに対するアレルギーや、ポリケチドによる腎機能障害の可能性、紅麹菌株がシトリニンを産生してしまった可能性から検証を始めた。

しかし、医師へのヒアリングや製品や紅麹原料の解析結果からそれらの可能性は低いと考えられ、その後は、個人のアレルギーや異物の混入を疑うようになったという。

そうした中、3月16日、製品や紅麹原料の一部ロットから不明の成分Xが検出された。その報告を受け「原因の詳細や混入経路は分からないものの、製品に問題があると考え、3月16日に回収の必要があると判断し、3月17日の緊急対策本部で決定した」(渡邊執行役員)

記者会見の冒頭では、小林章浩代表取締役社長が、「非常に多くの人にご心痛ご不安をおかけし、社会問題に発展して深くおわび申し上げる。消費者や製造販売業者、医療従事者、官公庁・自治体などに大変なご迷惑をおかけしている」と陳謝。使用中止や自主回収などの公表が、24年3月22日になったことについて「厳しいご批判、ご指摘をもらっている。真摯に受け止め深く反省している。今回の全容解明、丁寧な説明と補償を含めた真摯な対応、危機管理体制の改善に取り組む」と述べた。