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私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

レビュー 1~5話

原作 三浦しをん『舟を編む』
脚本 蛭田直美
演出 塚本連平、麻生学
音楽 Face 2 fAKE

キャスト
岸辺みどり    - 池田エライザ
馬締光也       - 野田洋次郎 辞書編集部主任 
西岡正志       - 向井理 宣伝部 元編集部。馬締の友人
荒木公平       - 岩松了 社外編集者 元辞書編集部
佐々木薫       - 渡辺真起子 契約社員
天童充          - 前田旺志郎 学生アルバイト
松本朋佑       - 柴田恭兵 国語学者。『大渡海』の監修者
宮本慎一郎    - 矢本悠馬 「あけぼの製紙」の用紙担当
馬締香具矢    - 美村里江 馬締の妻。割烹「月の裏」の料理長
五十嵐十三    - 堤真一 玄武書房社長 

周辺人物
松本千鶴子   - 鷲尾真知子 松本の妻(6、10話)
りょんぴー / 如月涼太郎 - 遠藤健慎 アイドル(6話)
ハルガスミツバサ - 柄本時生 装丁作家(7、8話)
秋野蘭太郎    - 勝村政信 明峰文化大学 教授(3、7話)

岸辺慎吾   - 二階堂智 みどりの父(8話)
岸辺真帆   - 野呂佳代 慎吾の後妻(8話)
山目満治   - 松田龍平 ソフトメーカ技術者(8話)


感想
辣腕社長の出現で、紙版の辞書制作に暗雲がたれこめるが、その社長が子供の頃、今の会社の名「玄武」の命名者だった。
馬締の「作り続ければ必ず最後の中型辞書になります」も名言。

また映画版「舟を編む」の松田龍平もちゃっかり出演。
そして原作(2011年に刊行)にはない元号改訂を入れ味付け。
後半のヤマ場は「血潮」の洩れ。ドタン場で地獄を味わうメンバー。その窮地を乗り切った時、宮本の告白。
そして最終回にはコロナで人との交流が出来ない状況(これまた原作にはない)と共に、新しいコロナ関連の言葉を加える作業に挑むメンバーたち。

原作は未読だが、この「みどり」目線の物語はピタっと来た。
なにより池田イライザが、いい。全くといっていいほど知らなかったが、最初の不満タラタラ状態(それで彼にも去られた)からどんどん辞書にのめり込んで行く姿が心地良かった。
馬締役の野田洋次郎もホントにいい味を出している。演技なのか素なのかよく分からない微妙な「間」にハマった。
向井理はいわずもがなの芸達者で、ちょっと軽薄ながら皆を支える「イイ男」他の配役もみなピッタリな感じ。楽しかった。
それから音楽。「Face 2 fAKE」という音楽プロデューサー・ユニットだとのことだが、出しゃばり過ぎず、肝心なところではグっと心に刺さる。
ちょっと「舟編み」ロスが起きそうだな・・・


あらすじ
第6話 3/24
「あ」と何かを思い出した馬締が皆を集め、西岡が会長の「月イチカツカレーの会」を本日から再開すると連絡。強制はいけないと言う荒木に「私、好きですから入会します」とみどり。


 

開いた時に当たる風が、普通の本と辞書とで違うことに気付くみどり。松本が「微風」と書いて「そよかぜ」と読ませることに言及。でもその後編集部に来たのは微風なんかじゃなかった・・・

月刊「フリージア」の休刊を告げる西岡。エグい新社長の事をくさす西岡。「死神」と言われて大ナタを振っている・・
出版界はどこも不況。「大渡海は大丈夫ですかね?」とみどり。
荒木は13年、いや43年越しの大渡海を止めてたまるかと怒る。
荒木と松本が企画を立て、30年かかって推進に漕ぎ付けた。
だが刊行に横槍が入り、人員削減を叶えるため西岡が宣伝部に移動(これがアルマゲドン伝説)残ったのが馬締で良かった・・・
それは置いといて、説得材料が必要だと言う西岡。
「八国堂国語辞典」の監修者のSNSが10万超えのフォロワー。
フォロワー数は説得材料になる・・
そこで「玄武書房」キーワードで検索すると先日の「辞書引き学習会」がヒット。だが「左の人VIVIANの読モ?」のコメント。
かつてVIVIANで読者モデルをやっていたみどり。だがその一連で、アイドル「りょんぴー」とCAP繋がりでの交際を勘ぐられた。更に「匂わせ」だと決め付けられ炎上。みどりは別アカで打ち消そうとして余計炎上させた。噂が収まっても中傷は続いた。
SNSは写真禁止にしとけば良かった、と謝る佐々木。削除依頼出来ないかと訊く天童。それよりも辞書編集部に迷惑を掛けている事が苦しいみどり。誰もそんなこと思ってない、と励ます西岡。
迷惑でなければこのままで、と言うみどり。あの学習会が面白かったって思って欲しい。昔だったら怒ってた。今は嬉しい。
本件は「様子見」という事になった。
その晩母から「星の王子様」が見つかり送ったとのメールが。
家で馬締が香具矢と話す。りょんぴーがCAP被ってくれて良かったね、と話す香具矢。しばらくして同意する馬締。

ある日役員会に呼ばれる馬締と西岡。「すまないね」と社長。


役員会の提案は「大渡海」のデジタル1本化。「辞書の意義は分かるが、紙はもういいでしょ。売れないよ」大反発の荒木。
紙の制約の指摘。スペースの制限、改訂版を出さないとミス訂正が出来ない・・・電子版は編集部にとってもメリット。


馬締が発言しようとした時、西岡が「一旦持ち帰らせて頂きたい」と発言。300名に亘る執筆者とは紙前提での依頼・・・それに表紙の装丁はあの「ハルガスミツバサ」場がざわめく。
2週間の猶予を得た西岡。装丁の件はハッタリだった。

編集部に戻り、紙の辞書の意義や利点を皆で考えることとした。
松本先生には言わない、と荒木。
その日「あけぼの製紙」で工場の人との顔合わせだったみどりは、苦しみながらも秘密を守った。宮本の視線が辛い・・・

子供の頃松本先生に会ったという天童。両手がなく足だけで全ての家事をする人の映画を観たが、エンディング曲で「互いに手を差しのべ」の歌詞にショックを受けた。その時に会った松本に促されて「手」と「さしのべる」を辞書で引き、手がなくとも手を差しのべる意味を知った。それは「持てる力を効果的に活かす」

皆に、紙の辞書をデジタルの「オマケ」にしようと提案するみどり。天童も賛同。「俺が降りるしかない」と事務所を去る荒木。
「付録」の言葉を調べるみどり。つけたし・・やってしまった。
古書店を巡った後、公園でぼんやりする荒木。そこに馬締とみどりが来る。松本にここを教えてもらった(辞書の話はしないで)
言葉を雑に使ったことを謝るみどりは「特典です」
1冊でも作れたら口コミで売れる・・・天童と佐々木も合流。
皆で説得材料を集めましょう!と肩を組むメンバー。

第7話  3/31
役員会まであと13日。チームで以下を取り組む。
①紙の辞書の意義と利点抽出(全員)
②玄武書房のSNS発信でフォロワー1万人達成(岸辺、天童)
③ハルガスミツバサさんのアポ取り(西岡)
そしてみどりが、スタンバイ出来たSNS画面を投稿した。

 

社長に、年寄りにデジタルは無理だと進言する役員。それには「年寄りへの侮辱だ」と返す社長。ご老人こそデジタルだ・・・
デジタル化の発注先を決めておけと指示を出す社長。
紙の検索の利点を「セレンディピティ」という言葉で表すメンバー。探したい言葉の周辺で目に入るもの。デジタルにはない。
松本がたまたま来て、場が緊張する。彼には絶対デジタルの話を聞かせてはならない。「とうとい」の語釈説明で乗り切った。


あの時の先生の「わくわく」を繰り返し思い出す事になる・・・
西岡が、ハルガスミツバサと全く連絡が取れないとボヤく。
 

元「VIVIAN」編集長の凛子に、紙でしか出来ないことを訊くみどりに「逆でしょう」と言ってWebでやれる事を列挙する凛子。


読モを辞めたいと言っていたみどりを励まして入社させ「VIVIAN」編集部に引っ張ったのは彼女。大恩人だった。
歳を取っていいのは、その先が見える事。5年先、10年先。
見せてくれてありがとね・・・ 

あけぼの製紙で紙の検討を進めるみどり。宮本が見せる、同じに見える2枚の紙を丸めて内側を見ると、透けた色が違った。


a値が違うという。a値が高いと赤味、低いと緑に見える。
黄色味と青味を指すのがb値。この件をSNSに載せようとして玄武SNSを開き、フォロワー急増(5千超え)に気付くみどり。
インフルエンサーにフォローされたのでは?と言う宮本。
「ヲタム」ちゃんというアニメ系の人だった。
みどりが多用するシールの話から、宮本が去年まで開発部でシールの剥離紙を担当していたと話した。捨てられる紙、と自虐する宮本に「剥離紙メッチャ使ってました」と言うみどり。
シール持ち出し用に、同社の剥離紙を愛用していた。
「泣きそうです」と互いに笑い泣き。

みどりにサシイレに来た西岡。フォロワー数アップが「ヲタム」ちゃん効果だと知っていた。正体不明で執筆依頼も受けない。
馬締たちの情熱が羨ましくて彼らに乗っかったと言う西岡。
やって来た馬締に五十嵐社長ネタを話す西岡。初代社長が創業時の社名募集を新聞で行った時、採用になったのが当時10歳の五十嵐十三の作品。歳も出身地も同じだが、まだ裏は取れず・・・
出身地は青森で、冬は本が友達だったという五十嵐少年の談。
「だったら本が好きな筈ですよね」とみどり。

ハルガスミツバサの件を西岡に訊くみどり。ハンドルネーム「がすみん」だが、自分がフォローした相手としか交信しない。
玄武SNSをチェックして「ヲタム」ちゃん経由で「がすみん」からフォローされている事が判明。連絡が取れる!
馬締の立候補を却下しみどりが対応。そしてアポが取れた。
役員会のあと「月の裏」で西岡が接待攻勢する予定。

そして役員会当日。向かった西岡と馬締。
そんな時、ハルガスミツバサが編集部にやって来た。

経由元の「ヲタム」ちゃんを知らないと言うみどりに画像を見せるハルガスミ。
鬼太郎と悪魔くん・・・鬼太郎はあの秋野教授だった。
秋はAUTUMN→オータム→ヲタム、・・・
断りに来たと言うハルガスミは、中が白紙でも売れるなんていう評価が申し訳ないと言う。本が大好きだけど、本気を出すほど本を貶めている様な気がして辛い。だから仕事も辞めたい。
「大渡海」を舐めないで下さい、そんなヤワな舟じゃありません」と返すみどり。貴方をその先へ連れて行きます。

一方役員会。デジタルとのセット販売を具体的に説明する西岡。
様々な応酬の結果、社長も一定の理解はしたが、辞書の需要や産業を守るより、まず会社を守らなければならないと言った。
「確実な勝算が欲しい。ある?紙の辞書で勝てる見込み」
作り続けることです、と答える馬締。「作り続けていれば必ず最後の、紙の中型辞書になります」その時こそウチの一人勝ち。


何十年かかるの?と呆れる社長に「わが社の社名、玄武とは?」
と問う馬締。「冬の守り神」と答える社長。

あなたに守られた本は、やがて冬を超えるでしょう・・・

しばし沈黙。
「間に合うの?セット販売」の問いに、13年前より辞書編集部はXMLデータを使っているため問題ない、と即座に返した西岡。
そこにみどりからメール。「ハルガスミさん、決まりました!」

第8話  4/7
2017/11/28。制作スケジュール確認。
2017年 三校終了。2019年 四校終了。2020年 校了。
尊いの用例と格闘するみどり(推しが尊い、尊み秀吉・・・)
尊いって元は何だったんですかね、と訊くみどりに資料室へ連れて行く馬締。用例採集カードの実物が100万枚収められている。53年分。言葉は定義付けしたとたん逃げて行く。

それでも追いかける・・・圧倒されるみどり。



三校が全て終わった。いよいよ四校に入る。
天童が大学の精鋭5人を召喚していた。図版チェックも含む。
総ページ数を増やすのは困難。8cmの壁(製本機の限界)
変更・追加は極力そのページ内で収める。一番怖いのは入っているべき言葉が入っていない時。一つ抜けていたら他に抜けている可能性を潰すため全チェックが必要。また見出し語リストの有無は手作業確認が必要。そうなると地獄だぞ、と荒木。

だが見つけられたら幸運。
四校が最後のヤマ。今後デジタル版の作業も入って来る。

紙とデジタルの同時発売は、紙版を出すため社長と交わした条件('20年7月)

SNSの利き紙に挑戦するみどり。正解!
イカの絵が上下逆になっているのを指摘するみどり。
「生物学的にはそれが正しいんです」と答える馬締。
一方デジタル版についても西岡と馬締がソフトメーカーの山目と仕様詰めを進める。


最近ではQRコードから資料に飛ぶのは常識らしい・・

2018年の年明け。父の家を訪れるみどり。後妻の真帆が大きなお腹で出迎える。おせちをつまむみどり。

真帆は二人を気遣って買い物に出掛けた。
こんな事になってごめん、と言う父

「楽しそうだからいいよ」言葉ってどんどん変わって行くと言うみどり(ヤバいって言葉)だから家だって人だって変わる。

家売って引っ越してもいいよ・・・

星の王子様のラストの事で宮本とメールで話すみどり。王子様は死んでいないと言う宮本(まあまあの毒だった・・・)
死なないと星に帰れないってのもオカシイし。

2018/1/12。

発売された「広辞苑第七版」のぬめり感を確かめる馬締。
「ぬめりまくってます・・」そこに宮本が紙の情報を持って来る。重さは1m^2当たり43g、厚さ48㎛。ウチと全く同じ。

なのにウチよりぬめってる。不透明度も色も負けている・・
あと出しじゃんけんで負けるわけには行かない、と松本。
手はありますと言う宮本。広辞苑も不透明度を上げるため酸化チタンを使っている筈だが、それをもっと効果の高いものに代えれば勝てるという。「あるんですね?」と言うみどりに「これから見つけます」
工場で交渉する宮本。その熱に押されて担当も本気を出した。
2018/4/18。宮本から連絡。「見つかりました」
2018/8/6。更に検討は続く。

2019/4/1。決定を待つメンバー。
「スペース的には「ら」行なら余裕があります・・・」と馬締。
そして「新しい元号は「令和」であります」皆で拍手。


「令和」に対する語釈が準備される。

2019/9/26。今日が最後のテスト抄造。

宮本から「始まりました」のメールを受けるみどり。
そこにハルガスミツバサが図案を3パターン持って来る。甲乙つけがたく、いっそ3パターン作ろうかとの話が出る中、それを破り捨てるハルガスミ。本当にいいものは一瞬で決まる。

考え直しますと言って去って行った(「滅せよ!」と叫んで)

2019/10/1。工場で最終サンプルを確認するみどり。ぬめり感を見て、不透明度、色合いを確認するために光にかざした。
「素晴らしいです。究極の紙を有難うございます」涙のみどり。
そして作り出した束見本を持ち込んだ宮本。馬締がチェックする。軽さ、ヌメリ感、不透明度とも文句なし。

みどりと宮本の会話。手のひらを太陽に、の歌から「血潮」の言葉が出て来る。情熱の意味もあると聞いて、大渡海が出来たら真っ先に引きますと言う宮本。

今夜食事どうですかと誘われ、受けるみどり。

編集部に戻って「ちしお」の見出し語を探すが「血潮」がなく焦るみどり。銀河辞典のチェック用見出し語には入っておらず。


大渡海には採用されていないかも、と用例採集カードを繰る。それは見つかった。カードを持って走るみどりだが、見つけなかった事にしようかとの思いがよぎる。

馬締に声を掛けられてとっさにカードを隠すみどり。

「何か・・・見つけましたか?」と問う馬締。
「抜けてました。・・・大渡海に「血潮」が入っていません」

第9話 4/14
今回の「ちしお」の洩れについて皆がそれぞれに自分のミスだと言って謝った。最後の松本までが「監修者の責任・・・」と言い出し、そこで「これで大体出揃いましたね」と笑った。
皆で気持ちを切り替える。松本は「血潮」の原稿執筆。
大切なのは岸辺さんが見つけてくれたこと、と頭を下げる松本。
そこにやって来た西岡が事情を聞いて仰天する。

 

 

用例採集チェックは頑張って2ケ月かかる。

刊行日は延ばせませんからね!と怒る西岡。

サグラダ・ファミリアじゃないんだから・・・
「大渡海を穴のあいた舟にはしません!」と言い切る馬締。
話を聞いていた天童の後輩たちも手伝いを申し出た。とりあえず2週間、2月末を期限として手順を決め作業開始。本件は極秘。
作業中に、今夜が宮本との食事だった事を思い出すみどり。
花束を持って店の前で待っている宮本にメールが。理由や励ましの言葉を打ちかけては消し、を繰り返す宮本だが、結局動画付きの電話で「ファイトです!」と送った。

みどりも同じく「がんばります!」

 

1日目、2日目・・9日目。夜、空耳を聞くみどり。天童は無視。
だが終電を逃しそうになった天童が「階段に幽霊!」と騒ぐ。
そんなドタバタの時松本が、岸辺さんのSNSはとてもいいと褒めた。だが正直怖いと言うみどり。言葉はナイフにもなる・・・自信ない。
そんな時、止血して手当てが出来るのも言葉だと松本。大丈夫。
血潮は、あなただから見つけられた。血潮があなたを呼んだ。
席に戻り用例採集カードに呟くみどり。一瞬でもなかった事にしようとした事を詫びた。「誰も置いてかない。みんなで一緒に海に出ようね」

そして14日目。とうとう252,007語の確認が終わった。
その中にハルガスミがいて驚くみどり。表紙の案を持って来た。


朝日がレイアウトされていた。「辞書は入り口と聞いたので」
あの日の朝日を思い出すみどり。

2回作り直したという。1回目来た時、遅くまで働く皆を見て「滅せよ!」己の自己顕示欲を滅したという(みどりが聞いた空耳の犯人)そしてカバーはかけないで欲しいと言う。返品にはならないし、汚れるほど売れ残らない。絶対に売れない訳がありません・・・
「連れてってくれるんですよね」「もちろんです♪」

待たせていた宮本に会いに行ったみどり。感激の宮本。
そばを食べながら話す西岡と馬締。結局「血潮」以外の落ちはなかった。骨折り損だったなと言う西岡。最高に幸せだと言う馬締は、西岡が時間稼ぎをしてくれていた事に感謝する。

夕食を終え、外をぶらつく宮本とみどり。月を見て、夏目漱石の話をするみどりに「好きになってしまいました」と直球で言う宮本。あの日から3年間、僕は紙を、あなたは辞書を追い掛けた。
「そして何より岸辺さん、あなたが大好きです」と宮本。
ごめんなさい、私・・・ただ伝えたかっただけと気を使う宮本。
立ち去ろうとする宮本。その後ろ姿に様々な事を思い出すみどり。「言葉にしてください」という馬締の声が頭をよぎる。
「待って」と宮本を追いかけるみどり。「岸辺さん?」
怖いんです、あなたの優しさが。甘えまくって、ある日突然黙って居なくなられたら・・ 
ないです!俺は自分の意思では黙って居なくなりません!と宮本。それがどんなに苦しい事か知ってるんで・・・
気持ちを伝えたい。そのために言葉があるんですよね。
子どもの時のみどりが手を取って、宮本に手を繋がせた。


「恋」の語釈と、「愛」の語釈・・・

「私も、あなたが大好きです」と答えるみどり。
「まじすか・・」「マジです(笑)」「ヤッター!」
頭を下げ「よろしくおねがいします!」と宮本。

 

 

香具矢と話すみどり。「ああ、あの時の・・いいと思う。みどりちゃんにピタッっていう感じ?」
みどりに馬締とのなれそめを訊かれる香具矢。
久しぶりに家に帰って来た時、香具矢が猫を抱き上げたタイミングで一人だけ住んでいた下宿人の馬締が

「迎えに来たよー」と登場。


「迎えに来てくれたんだ・・・」の返しに「うひょっく」

「何ですか?その言葉」「分からない・・・」それから16年。
長続きの秘訣は「思いやり 過ぎないこと」
思いやりって、想像し過ぎると本当から離れて行く(相手と自分の)

2020年1月10日。「大渡海」刊行発表会。
進行係の西岡。辞書の紹介が始まる。
装丁のアップで、波が文字で構成されている事が分かる。
そして挨拶の前にコケる馬締・・・

2020年1月16日。四校も大詰め。
そんな時松本が皆に、食道がんになったと告げる。場が固まる。
明日から検査入院だという。入院先からも指示が出来るよう、タブレット購入を手伝って欲しいと言われ、天童が手を上げた。
入院中に仕事なんて、と言う荒木、佐々木を横にその段取りを整えると告げた馬締。店への途中、日本語学者を目指すと松本に言う天童。残った皆に真意を伝える馬締。「もし俺だったら、今大渡海から締め出される方が辛いです・・・」
がんなんて治る病気だから、とみどりを励ます佐々木。そして皆も、ローテ組んでお見舞いしましょうなどと話していた。
だがその後、新型コロナウィルスの流行で、逢いたい人に逢えない状況が始まってしまった・・・

第10話  4/21
新型コロナの感染が広がる。松本のがんはステージ2であり、抗がん剤で小さくして手術する方針。お見舞いは治療が落ち着いてから。今は、辞書の進捗を知らせるのが一番のお見舞い。
新型コロナウイルス感染症を「COVID-19」とWHOが命名。

西岡が来て予約が好調だと喜ぶが「体調に気を付けて」と言う。
病院へ松本の見舞いに行く荒木だが面会謝絶で会えず。

そこに松本の妻 千鶴子が来る。

松本に仕事をさせてくれて、と千鶴子に感謝される荒木。

「月の裏」は客が激減して、厳しい営業環境となっていた。
「終わりますよね、すぐ」と話すみどり。

「うん・・・」と香具矢。

校了日の2/末まであと1日となった。
宮本が、辞書用の紙150トンの準備が出来たと知らせに来た。
このまま校了していいんでしょうかと言う馬締。新型コロナ関係の言葉が急増している。だが荒木は「刊行日に間に合わない。入れるのは無理」と反対する。みどりも辞書に入れるかは10年観察して、との松本の方針を言う。だが松本は「残すべき言葉もある」とも言っていたと語る馬締。「松本先生はどう判断していたのでしょうか・・」
1日で出来る仕事じゃないと重ねて反対する荒木。第2版もなくなる。そっと中座する宮本に気付いたみどり。

そこに松本の妻 千鶴子が来る。

馬締に紙袋を渡し、みどりには封筒。
みどりへは「恋愛」の語釈に「異性」「男女」の表記は不要とする、という内容。「3年越しのラブレターです」とみどり。
馬締への紙袋には、新型コロナ関係の追加の言葉の束があった。


嵐の避け方に関する言葉はきっとなくならない・・・
「入れたいです」とみどり、天童、佐々木が言う。
「やってくれたな、辞書の鬼」と荒木。馬締も「やりましょう」
そこへ宮本が走り込む。印刷機の手当てが1台追加出来るという。その分校了を遅らせられる。馬締は、辞書用の紙は特殊で普通の印刷機にはかからないと言うが、宮本はどんな印刷機にもかけられる紙にしたと胸を張る。「究極の紙ですから」
削りどころを探し、入れ込む作業が開始された。

3月5日。スペースが厳しい中、コロナの命名となった菌の図版を入れたいとの話が出る。「夏川さんに連絡入れます」と佐々木。
馬締と荒木は計算を重ね、何とか6行分のスペースを確保した。

3月20日。そわそわする皆。荒木が電話を受ける。千鶴子から。
辞書宣伝で書店回りをしている西岡にみどりからメール。
「松本先生、手術無事終わったそうです」

そして3月31日にとうとう校了。みなで拍手。

4月6日。印刷開始。
みどりが忙しくしている間に「月の裏」の経営状況は悪化。
そして休業を余儀なくされる。
「遊園地行かない?」との香具矢の誘いで出掛ける馬締とみどり。だが「当面の間休園します」の看板。
行く前に乗りたかったと言う香具矢。修行時代に世話になった大将が、休業を知って跡継ぎの息子を見て欲しいとオファー。
長ければ4、5年。「イヤです、今は行って欲しくない」と馬締。
もし向こうで感染したら、もし会えないまま・・・いやです!
「じゃあみっちゃんは止められる?辞書の仕事」と返す香具矢。
「ごめん、子供みたいなこと言った・・・」去って行く香具矢。
香具矢を追いかけ、苦しさに気付けなかった事を謝るみどり。


翌日、編集部で馬締を見るみどり。

朝の香具矢の話では、昼の新幹線で行くとの話だが、馬締は「いやです!」と言って出社したという。
馬締にハッパをかけるみどり。「今帰れば間に合います。行ってらっしゃいの言葉」「行って欲しくないのに言えません・・・」


言葉なんて距離の前には無力だと言う馬締に、香具矢宛てに書いた15枚のラブレターを前に出すみどり(西岡が取ったコピー)
「大渡海」もそうなんですか、距離なんかに負けちゃうんですか?」そこに松本からのメール。

薬の選択がマッチして、今は楽になった。的確な自己申告により医師は薬を選ぶ。同じ痺れの表現でも様々。私が死んでも皆が私の話をしてくれる。死者とさえ繋がれる・・・
「俺、行ってきます」と飛び出して行く馬締。
そして家を出るところだった香具矢に「行ってらっしゃい・・」


2020年7月15日。「大渡海」の刊行日。
会場に行こうとする馬締とみどり。そこに社長が編集部を訪れる。「君たちの勝ち。俺は守りたいよ」と言う。
子供時代、本に出て来る分からない言葉は辞書が教えてくれた。
家中の本を読み尽くしたら、辞書を読んだ。まさに言葉の海。
「取りに行くぞ、玄武書房の一人勝ち」「ハイ」と二人。

刊行祝賀会場。
みどりが書いたSNSの文を皆が読んでいる。

表紙の波は文字で出来ていた。


入院中で会場に来れない松本のため、リモートの準備がされた。
スクリーンに松本が映る。

大渡海が大海原へ出航しました・・・

辞書編集部の皆に感謝の言葉を伝える。
佐々木、天童、西岡、荒木、馬締、そしてみどり。
岸辺さんが来てからの3年間はなんて楽しい日々だったでしょう・・
みどり独白
あの時、私は始まりの光を浴びて、その光に守られ、励まされ、導かれて海を渡り、目指す岸辺は遥かかなた。見えないくらい遠いけど、私も誰かに、あなたに、光を届けられるように。


2024年4月。
ソケブー大事典の編集作業に取り組むメンバーたち。

みどりと宮本は職場でもいい雰囲気。

それをガン見する編集部メンバー。


ソケブーの話を、たい焼き食べながら松本に話す荒木。


次はどんな辞書を作りましょうか、とやる気満々の松本。

生きることは変わること。自分も、みんなも、世界も、なにもかも。変わることは止められない。それが嬉しい時もあれば、きっと苦しい時もある。励む 挑む 積む 泥む(なずむ)・・・ 
その先へ。言葉の海に浮かぶ小さな光を集めて、伝えて、受け止めて。誰かと、何かと繋がってその先へ。
辞書は、そのための大切な舟。これからも私、辞書作ります!